人用の石けんは、犬にも使える?

人用の石けんは、犬にも使えるか 犬の皮膚

多くのお客様からいただく質問のひとつに、
「人用の石けんは、犬にも使えますか?」というものがあります。

一見すると、どちらも「肌の汚れを落とすための洗浄剤」。
けれど、人と犬の皮膚は構造も機能もまったく異なり、守るべきリスクも違うのです。

🧬 人と犬の皮膚構造の違い

1. 皮膚バリア機能の厚みと強さ

  • 人:15〜20層の角質細胞で構成され、バリア機能が強い。
  • 犬:わずか3〜5層。人の約3分の1の薄さで、乾燥や刺激に弱い。

犬は体の大半が被毛で覆われており、物理的な防御を“毛”に任せているため、皮膚そのものは非常に繊細です。
角質層が薄い分、水分が蒸発しやすく、外部刺激(アレルゲン・紫外線・化学物質など)も侵入しやすくなります。

2. 皮膚のpH(ペーハー)の違い

  • 人:弱酸性(pH4.5〜6.0)
    常在菌のバランスを保ち、病原菌の繁殖を防ぐ。
  • 犬:中性〜弱アルカリ性(pH6.2〜7.8)
    細菌や真菌が増えやすい環境で、感染症リスクが高い。

つまり、同じ石鹸でも「アルカリ刺激の受け方」が全く違うのです。
人用石鹸の洗浄力やpHは、犬の皮膚には強すぎる場合があります。

3. アレルゲンに対する反応性

犬は人よりもアレルゲンに敏感で、アトピー性皮膚炎などが多く見られます。
これは皮膚バリアが薄く、環境中のアレルゲンが皮膚から侵入しやすいため。
ハウスダストや花粉だけでなく、合成香料や界面活性剤など“日常の成分”が刺激となることもあります。

4. 被毛があることの利点とリスク

被毛は紫外線や摩擦から皮膚を守る一方で、
毛玉や皮脂の滞留があると通気性が悪くなり、皮膚炎の温床になります。
犬の皮膚には全身にアポクリン汗腺があり、汗や皮脂が毛にとどまりやすいため、
放っておくと酸化・細菌繁殖・脂漏症の原因にも。

🌞 人と犬、それぞれの皮膚が抱える“リスク”の違い

観点
紫外線リスク毛が薄く、紫外線を直接浴びやすい。メラノーマや基底細胞がんなど皮膚がんの発症率が高い。被毛に覆われており紫外線防御力が高い。被毛の薄い部位(鼻・腹部など)を除けば、発がんリスクは低い。
圧迫・褥瘡リスク長時間の同一姿勢や介護環境で発生しやすい。頻繁に体勢を変えるため発生しにくい。
精神的要因による皮膚症状ストレスや心因性要因で皮膚炎や自損行為を起こすケースが多い。舐めすぎによる皮膚炎などはあるが、精神的因子の影響は比較的単純。
構造的なバリア力角質が厚く、弱酸性で防御力が高い。角質が薄く、中性〜弱アルカリで感染リスクが高い。

🐾 まとめ

人は、厚い皮膚と酸性のバリアで“外から守る”構造。
犬は、被毛と常在菌のバランスで“内から守る”構造。

だからこそ、
人にとって「やさしい石けん」と、犬にとって「やさしい石けん」はまったく別ものなのです。

🧼 小多福堂の石けんは、どんな石けんなのか。

犬の皮膚は、人よりもずっと薄く、乾きやすく、刺激に敏感。 だから小多福堂の石けんは、“犬の皮膚科学に基づいた設計思想”で作っています。
ひとつひとつの配合や不使用には、すべて犬の皮膚構造に基づいた理由があります。

1. パーム油は使いません

パーム油は石けんを固く、泡立ちよくしてくれる反面、脱脂力がとても強い油脂です。人の肌では問題がなくても、皮脂を奪いすぎる場合があります。

犬の薄い皮膚に存在するバリア機能の鍵となる脂質(セラミドなど)を洗い流さないよう、脱脂力が強すぎるパーム油は避け、洗いすぎを防ぐことを優先しています。

2. ヤシ油(ココナッツ油)は、必要最小限だけ

ヤシ油も洗浄力が強い油脂ですが、泡がないと皮膚に手の摩擦が起きてしまいます。
そこで、“泡のクッション”をつくるためだけに少量配合。
泡のきめと粘りで、こすらずに汚れを浮かせる洗い方を実現しています。

3. 香料や精油は使いません

犬の嗅覚は人の100万倍以上。
人に心地よい香りでも、犬にはストレスや刺激になることがあります。
また、精油には植物由来でもアレルゲンや皮膚刺激物が含まれる場合があります。
だから小多福堂の石けんは、完全無香料
香りのない静かな空気の中で、犬が安心して過ごせるようにしています。

4. 防腐剤や合成添加物も使いません

石けんはアルカリ性のため、もともと菌が繁殖しにくい性質を持っています。
それでも一般の製品では見た目や保存性のために防腐剤を加えることがありますが、
犬の皮膚にとってその必要はありません。
余分なものを足さないことが、いちばんのやさしさと考えています。

5. 未精製油脂は使わず、すべて食用レベルの精製油脂を使います

自然のまま=安全、とは限りません。
未精製の油脂には、不純物や酸化物、遊離脂肪酸が残っていることがあり、
それが犬の皮膚に刺激となることもあります。
小多福堂では、人が食べられるほどに精製された油脂だけを使っています。
自然でありながらも、コントロールされた安全な自然を選んでいます。

6. 洗うことは、壊さないこと

犬の皮膚には、常在菌という”守りのチーム”が住んでいます。
最新の皮膚科学では、この常在菌のバランス(細菌叢)の乱れこそが、アトピー性皮膚炎などの皮膚病悪化の重要な原因だと判明しています。

小多福堂の石けんは、この常在菌のバランスを壊さないよう、石けんは油分を少しだけ残す設計にしています。
「汚れを落とす」よりも「皮膚を整える」ための洗浄。
小多福堂の石けんは、洗うことで壊すのではなく、洗うことで“守る”ための石けんです。

🐾 はじめての方へ──トライアルセットのご案内

小多福堂の石けんは、すべて手仕事で作っています。
ひとつひとつの泡立ちや肌あたりには、それぞれ少しずつ個性があります。
「うちの子にはどんなタイプが合うだろう?」
そんな方におすすめなのが、小多福堂のトライアルセットです。

オリーブ油をメイン油脂とした、優しい泡立ちの小多福石けんのミニサイズ。
パームフリー・無香料・無添加・食用油脂100%
紫根とカレンデュラの浸出油を使用した、肉球バームと肉球オイルがセットになっています。

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泡立てネットやガーゼを使えば、こすらず“泡だけで洗う”ケアができます。
皮膚を乾かしすぎず、毛並みもしっとりとやわらかに仕上がります。
ぬるま湯に溶かしてガーゼを浸して拭いてあげるだけでも、気持ちよさそうにしてくれます。

🕊 おわりに

「人にやさしい」と「犬にやさしい」は、同じ言葉でもまったく意味が違います。
人の皮膚は“厚くて守れる”ようにできていて、 犬の皮膚は“薄くて守られている”ようにできています。

だからこそ、小多福堂の石けんは、 洗うことで壊すのではなく、洗うことで守る。

最新の皮膚科学に基づき、犬がもともと持っている“守る力”を壊さないためのやさしさを、
一つひとつの石けんに込めています。

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