季節のうつろい
七十二候では「蟋蟀在戸(きりぎりす と に あり)」といいます。
夜の空気が少しずつ深まり、庭の片隅や戸口のあたりで虫の声が聴こえるころ。
秋の長夜がはじまり、家の中のあかりがいっそう温かく感じられます。
空気は乾きはじめ、肌や喉のうるおいがゆっくりと奪われていく季節です。
🍁 七十二候「蟋蟀在戸」のころの植物と和漢
🌼 菊(きく)
「菊花開」から続いて、まだ美しく咲き残る花。
和漢では、「清熱」「明目」「鎮静」のはたらきをもち、頭の熱や目の疲れを鎮める生薬として知られています。
乾燥した空気で疲れやすい目や頭をやさしく整え、秋の気の乱れを鎮めてくれる花。
——お茶にしても、香りを部屋に飾っても、静かな夜に心を澄ませてくれる存在です。
🌿 当帰(とうき)
この時期、地中でゆっくりと根を太らせていく時季。
当帰は「血を養い、めぐりを整える」和漢の代表格。
冷えによる不調や乾燥からくる“気の滞り”をほぐしてくれます。
犬の養生でも、血行を促して体を温める植物として重宝され、「温守湯石けん」にも欠かせない素材です。
——自然のリズムに合わせて、土の中で“準備する”姿は、冬を迎える私たちに似ています。
🌾 はとむぎ(ヨクイニン)
秋の終わりに実りの季節を迎える穀物。
古くから「肌の巡りを助け、余分な水を出す」とされ、
和漢では“気・血・水”のバランスを整える穀薬。
乾燥でごわつく皮膚を内側からなめらかにし、犬の皮膚ケアにもやさしく寄り添う素材です。
——“美しさはめぐりの中にある”を教えてくれる植物。
🌱 甘草(かんぞう)
土の力をゆっくり吸い上げながら、寒さに備えて糖分を蓄えるころ。
甘草は、“調和の生薬”と呼ばれ、他の和漢をやさしくまとめる働きがあります。
乾燥でこわばった体にも、気持ちにも、
やわらかな“なごみ”を与えてくれる存在。
——犬用石鹸の中でも、刺激をやわらげる目的で少量だけ配合されることがあります。
まるで秋のあたたかな陽だまりのような生薬。
🍋 陳皮(ちんぴ)
みかんの皮を乾かしてつくる、冬支度のはじまりの香り。
この時期の陳皮はまだ若く、“気をめぐらせる”香りの力が強い。
冷えや胃の不調、気分の沈みにやさしく働きかけます。
犬には直接使わずとも、
飼い主がこの香りを嗅ぐだけで、自然と呼吸が深くなり、
穏やかな時間を分かち合えるはずです。
「蟋蟀在戸」のころ、草木はもう語らず、香りで季節を伝えてくれます。
その香りや色に耳を傾けるように、
犬の毛のぬくもりや、呼吸のリズムにもそっと耳を澄ませて。
自然の中のすべてが、「冬への準備」を始めています。

  
  
  
  

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