散歩の道でふと見上げる木々。
丸い葉っぱを茂らせる木もあれば、まっすぐ空へ伸びる細い葉の木もあります。
「広葉樹」と「針葉樹」。
名前は知っていても、その違いや、日本の森でそれぞれがどんな役割を持っているのか。
そして、それが私たちと犬たちの暮らしに、どうつながっているのか。
今日は、小多福堂店主として・犬と暮らす一人として、森の話を少しだけまとめてみます。
広葉樹と針葉樹、いちばんシンプルな違い
広葉樹(こうようじゅ) 葉っぱ:平たくて広い(ケヤキ、ブナ、クヌギ、コナラなど) さらに、 多くは春に葉を茂らせ、秋には紅葉して落葉 種類が多く、虫・鳥・小動物など、たくさんの生き物のすみかと食べ物になる
針葉樹(しんようじゅ) 葉っぱ:細くてとがった針のような葉(スギ、ヒノキ、マツ、トドマツなど) また、 多くは常緑で、一年中緑 まっすぐ成長しやすく、木材として利用しやすい
このように、 どちらが「良い」「悪い」ではなく、役割が違う相棒同士、というイメージのほうが近いです。
日本の森は「針葉樹が多そう」で、ちょっと複雑
山を車で走ると、同じ高さ・同じ色のスギやヒノキがずらっと並ぶ風景をよく見かけます。
その理由は、戦後の住宅需要を支えるために、広葉樹の森を伐ってスギやヒノキを大量に植えた「人工林」が全国に広がった影響。日本の森林のうち相当部分がスギ・ヒノキなどの人工林になっています。
しかし本来の日本には、
- ブナやミズナラなどの落葉広葉樹林
- シイ・カシなどの常緑広葉樹林
- 針葉樹と広葉樹が混ざり合う森(いわゆる里山)
など、多様な森がモザイク状に広がっていました。
近年は国の方針としても、「針葉樹一色」から広葉樹をまぜた多様な森に戻していこうという動きが進められています。
近年の森に起きている変化 ― メガソーラーと森林開発
ところで、ここ数年、日本の森ではもうひとつ大きな変化が起きています。
それが、メガソーラー(大規模太陽光発電)による森林開発です。
再生可能エネルギーの普及という目的自体は、とても大切なこと。
ところが、山の斜面や里山の一部を伐って設置されるケースも増え、
広葉樹や針葉樹を問わず、森林そのものが減少・分断されている地域があります。
林野庁の資料によると、
太陽光発電の設置にともなう「林地開発」の件数は年々増加し、
土砂流出や水源の変化、生き物のすみかの喪失などが課題として挙げられています。
(出典:林野庁『太陽光発電に係る林地開発をめぐる現状と課題』)
WWFジャパンも2025年のレポートで、
「累積的影響に配慮した自然・地域との共生」を呼びかけています。
広葉樹の森が守ってくれるもの
さて、広葉樹の多い森には、犬と暮らす私たちにも関係のある、やさしい力がたくさんあります。
気温と湿度のクッション
夏は木陰をつくり、冬は風をやわらげる。散歩道が広葉樹に守られている場所は、犬たちも歩きやすい。
土と水を育てる
落ち葉がふかふかの土をつくり、雨をゆっくり抱えて川へ流す。その結果、山の水が安定すると、下流の私たちの暮らしも守られます。
生き物の多様性
ドングリ、木の実、花、虫。食べるもの・隠れる場所が増えるので、鳥や小動物、大型動物まで、多くの命が循環しやすくなる。
「自然なままの森」というと、手を入れないことのように聞こえるけれど、
実は人の暮らしといっしょに「ちょうどよく手を入れ続ける」ことで成り立ってきた森もたくさんあります(里山の薪採りや落ち葉かきなど)。
針葉樹の森にも、大事な役割がある
一方で、針葉樹も悪者ではありません。
- まっすぐ育つので建築材として優秀
- 根を張り、斜面を守る役割もある
- さらに言えば、高い山の過酷な環境では、針葉樹が主役の森もある
ただ問題になるのは、
- 同じ種類だけをびっしり植えた
- そしてそのあと十分に間伐などの手入れがされていない
という状態。
光が地面まで届かず、下草や広葉樹が育たない「暗い森」になると、土砂崩れリスク、生き物の減少、花粉問題など、いろいろな歪みが出てきます。
森にとっても、犬と人にとっても、
単色より「まざっている」状態のほうが、息がしやすいのだと思います。
混ざり合う森=里山というヒント
広葉樹と針葉樹、田んぼ、畑、小川、人の暮らし。
これらがほどよく混ざり合った「里山」は、日本らしい景色であり、生き物の宝庫でもあります。
私たちが散歩する土手や、公園の大きな木、少し足を伸ばした山の遊歩道。
そこにどんな木が生えているかに目を向けることは、
- 「この森は息してるかな?」
- 「ちゃんと光や水が巡ってるかな?」
といった、足元の環境に目を向ける、小さな第一歩になります。
小多福堂としてできる、小さな選択
犬用石けんをつくる立場として、森のことは他人事じゃないなあ、と感じています。
たとえば、
- 植物油や和漢素材を選ぶとき、
「どこから来た油か」「その背景にある自然や人の暮らし」をできるだけ想像すること。 - パーム油のこと、日本の森のこと、里山のこと。
石けんの原料から、少しずつでも「森を削らない」選択肢を探していくこと。 - 散歩の途中で見上げる木の名前を一つ覚えてみること。(今日は、見上げると大きな柿の木、そして、たくさんの花を咲かせた金木製、地面にはたくさんのどんぐりを発見)
これこそが、とても小さいけれど、
犬と暮らす私たちが、森とこれからも一緒に生きていくための “投票”みたいなものだと思っています。
今日も、こたつとふくと歩く道の木々を見上げながら帰ろう。
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参考資料
- 林野庁『太陽光発電に係る林地開発をめぐる現状と課題』
https://www.rinya.maff.go.jp/j/tisan/tisan/attach/pdf/con_4_6_1-30.pdf - WWFジャパン『太陽光発電の開発問題を抑制し自然・地域と共生するには?』(2025年9月)
https://www.wwf.or.jp/activities/opinion/6066.html



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