今では「あんこ」や「お祝いの赤飯」として馴染み深い小豆。
でも、日本における小豆の歴史を紐解くと、それは単なる食材以上の存在でした。
古来、小豆は「食べるもの」であり、「祓う(はらう)もの」であり、そして「境界を守るもの」。 私たちの先祖がこの小さな赤い粒に託した、深い知恵と物語を覗いてみました。
1.薬として、暮らしを整える。漢方名「赤小豆」
小豆は古くから食用・薬用として重宝されてきました。
漢方の世界では「赤小豆(せきしょうず)」と呼ばれ、その薬効は今もなお注目されています。
- 体内の余分な「水」を出す: 優れた利尿作用があり、むくみの解消に。
- 解毒と消炎: 膿(うみ)や熱を外に逃がす。
- サポニンのチカラ: 小豆の皮に含まれるサポニンは、脂肪の吸収を抑えたり、強い抗酸化作用で老化を防ぐとも言われています。昔の人は、もっと感覚的に「体が軽くなる豆」として使ってきたのかもしれません。
季節の変わり目や、産後、病後など、体が「揺らぎ」を感じるときに小豆を食べる習慣。
それは、科学的な栄養学が確立される前から、私たちが体感として知っていた知恵なのです。
2.なぜ「赤」なのか? 魔除けとしての小豆
日本では古来より、「赤」は命、血、火、そして太陽の色と考えられてきました。
強い生命力を象徴するこの色は、同時に「邪気を寄せ付けない色」でもありました。
小豆が使われる場面を思い返すと、そのすべてに意味があることがわかります。
- 赤飯: 出産、成人、節目の祝い。ハレの日の喜びを穢れから守る。
- 小豆粥: 1月15日の小正月に。新年の始まりに溜まった「気」を浄化する。
- お彼岸のぼたもち: ご先祖様を供養し、災いを遠ざける。
- おまじない: 昔は枕元に小豆を置いて寝ると、悪夢を見ないという伝承もありました。小さな粒が、私たちの眠りまで守ってくれていたのですね。
「お祝い」と「厄落とし」。相反するように見えて、どちらも「健やかに、無事に生きる」という願いの根っこは同じです。
3.妖怪「小豆研ぎ」が教えてくれること
ここで少し不思議な話をしましょう。 夜の川辺で「ショキショキ」と音を立てる妖怪、小豆研ぎ(あずきとぎ)。
なぜ、妖怪が小豆を研いでいるのでしょうか?
実は、水辺や夜という時間は、古くから「あの世とこの世の境界」があいまいになる場所。
小豆を研ぐあの独特な音は、私たちへの警告。
「これ以上、境界に近づいてはいけないよ」 小豆研ぎは、目に見えない世界との境界線に立ち、私たちをこちら側の世界へ留めてくれる「番人」のような存在だったのかもしれません。
また、地方によっては冬至にかぼちゃと小豆を煮る「いとこ煮」を食べる習慣がありますが、これもまた、厳しい冬という「季節の境目」を乗り越えるための知恵と言えるでしょう。
4.食べること、祓うこと、生きること
小豆は体を整え、その赤色は邪を祓い、物語の中では境界を守る。
これらはすべて、同じ一本の線でつながっています。
昔の人は、言葉にできない「体の不調」や「心の不安」を、小豆という具体的な食べものや、妖怪という物語に託して扱ってきました。
目に見える効果効能だけでなく、「これを食べたから大丈夫」と思える安心感。
効率やスピードが求められる現代だからこそ、小豆を煮る静かな時間や、その深い赤色を愛でる心のゆとりを大切にしたいものです。
次の小正月や、少し体が重いと感じる日に。
一握りの小豆を手に取って、その小さな「守護神」の力を感じてみませんか。
私は最近、小豆を蒸して冷凍ストックしておくことにはまってます。
実は蒸すことで、茹で汁に溶け出しやすい栄養もギュッと閉じ込められるそう。
ごはんに混ぜたり、サラダに混ぜたり、そのまま食べたりしています。



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